映画『ノーカントリー』何を描きたかったのか

今年のアカデミー賞4部門取った映画『ノーカントリー』。
血と暴力が苦手なのに、コーエン兄弟のファンについていって観てしまった。六本木ヒルズにて。

原作は、コーマック・マッカーシー著「血と暴力の国」。
この日本題はとても的を得ている。
原題は「No Country for Old Men」。映画ももちろんこの題名。
これを一部だけとって「ノーカントリー」という邦題にするのもどうかと思うけど、映画『血と暴力の国』としてしまうと、全くその通りなのだが、いくらアカデミー賞受賞作とはいえ、敬遠して観ない人がでることは確実。

ひとことで言ってしまうと、麻薬と金にまつわるバイオレンスのノワール映画。
麻薬がらみの大金を偶然見つけて横取りしたベトナム帰還兵の男(ジョシュ・ブローリン)が殺し屋に追われる話。
その殺し屋(妖怪のようなハビエル・バルデム)が、圧倒的な暴力と血生臭さで迫ってくる。
かかわる人々はすべてなんのてらいもなく殺される(知らず知らずのうちに生かされたりもする)。
人生はコインの裏表。

観終わって、ほんと疲れた。
そして、「一体何が描きたいんだぁ!」と混沌とした気分になる。

しかし。
後になって、じわじわ~と脳内に、この映画の凄さが染み出てくるのだ。
とりあえず何を描きたかったかは観る人にゆだねられたということで落ち着く。

考えたのは
1.監督のコーエン兄弟は、とにかく血と暴力を徹底的に執拗に描くのが楽しかっただけでは?
2.血と暴力がたくさん、それも生々しいのをたくさん見せて観客を怖がらせたり不快な気持ちにさせたかっただけでは?
3.アメリカという国そのものを映画で描きたかったのでは?

保安官(トミー・リー・ジョーンズ)がしきりに現在のアメリカを嘆いているけれども、アメリカという国はベトナム帰還兵の問題でも、彼の父親の叔父が殺されたエピソードをとっても、ずっと”No country for old men”であって、保安官のまるで昔は正義があったかのような嘆きは間違っているのだ(と思う)。

あっ。やっぱりこの映画は凄いかもしれない。
というか原作が。
銃、金、麻薬、保安官、先住民、牛、車、モーテル、戦争、そして石油。
血と暴力。
横取りしたベトナム帰還兵と、人を殺すのにためらいのない怪人のような殺し屋と、もはや正義などないと嘆く老人(保安官)だけで、アメリカの輪郭が浮かび上がる。

そしてコーエン兄弟の技巧も凄い。
前半の圧倒的で執拗なほどの殺人描写や、傷口を自分で治すシーンなど(もーあまりにリアルで観ていられなかった)、最後のある意味あっけないほどのストーリー運びに寄与していたり、考え抜かれた描写だなぁと後からいくつも思い出されたり。
(ただし、観ている間は圧倒的なバイオレンスでへなへななのでそんなこと考えてる余裕なし)

やっぱり1のコーエン兄弟が楽しかっただけなんでは?
の気持ちがまたじわじわと。

満足度:★★★★☆
観終わった直後は★3つなのだが、じわじわ~と★4つ。
それと、あれだけの暴力シーンなので、血と暴力がほんとにだめです。
という人にはオススメしません。たぶん激しい暴力描写のせいでR-15指定。

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